+妄想
I'm home (妄想話)

冬を告げる英国は、どんよりと重い雲に閉ざされて。

昼なお暗く、陰鬱な空が闇へと沈むと、
その代わりのように、街は華やかなイルミネーションで包まれる。

「じゃあ、イチバンはどれだ〜?」

「一番って?」

「どーせ見るなら、やっぱ一番すごいヤツだろ〜」

「どの広場やストリートのライトアップも、綺麗だと思うけど…」

真剣に悩み始めたアルに、イブカが呆れた視線を向ける。

「あんた、本当にユージューフダンだよな〜」

「でも、一番を決めるのは難しいよ」

デコレーションの趣向が違えば、人それぞれに一番の意味合いも変わってくる。
要するにアルは、そう言いたいらしい。
イブカはため息をつくと、答えを出せない質問の方向を変えてみる。

「じゃあ、アルが一番好きなヤツはどれだ〜?」

「えっ?」

虚を衝かれた表情で、アルがイブカを見返す。

(オレ、何かヘンな事言ったか〜?)

真っ直ぐに返された視線に、
つられた動揺を隠して、イブカは重ねて答えを迫る。

「ええと、それは…」

アルは曖昧に言葉を濁して、窓の外へと視線を逃す。

「イブと一緒には、絶対見れないもの…かな」


それから数日の間というもの、
このクイズの謎解きにイブカは頭を悩ませた。
今でもイルミネーションの前を通る度に、首を傾げているらしい。

答えを知ったならば、君は笑うだろうか――。

白い息を吐きながら見上げれば、
明りの灯るフラットの窓が、四角く夜に浮き上がっている。

冬の夜に浮かぶ、一番暖かなイルミネーション。
アルは小さく微笑んで、家の扉に手を掛けた。


#デジホ4周年記念で、妄想も一周しました。
 甘々が書きたかったんですが、私にはコレ以上は…(ゴフッ)
 多分このクイズの答えは、イブカ側としても成立してると思うのですが、
 お互い気付いてなさそうなところが、この二人の絶妙さというか、
 もぉ、あとは二人で勝手にしてくれーいってカンジです。(笑)
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