こんなワケの分からぬ状況で
クリスマスだなんて、信じられない。

「ウチは寺だぞ!?」
「わかってるってー」

絶対に、分かってない。
なんで線香臭い寺の庭木が、
クリスマスツリーのイルミネーションで飾られてしまうのか。
異様という前に、そもそも宗教が違う。

「だって。せっかくいいカンジの大木があるのに、もったいないよ?」

そういう問題ではない。

「親父に見つかったら、殺される…絶対…」

もうダメだ、と頭を抱えてしゃがみ込むオレに、
あいつは、えへらと笑って

「ちょーどいいじゃん。
 お前、坊主になんかなりたくないっていってたよな」

などと、オレのいつもの愚痴を口にする。

「……だから?」
「これで、怒ったオジサンに勘当される」
「残念だが、その前にオレは殺されるよ」
「それは残念」

微塵もそんなこと、思ってもいないくせに。
あいつはただ、オレを困らせて楽しんでいるだけだ。

「…おまえ、性格悪いぞ」
「そんなの、わかってるけど?」
「なら、治せ」
「どーして」
「オレが」

続く言葉をどうするつもりなのか、自分でもわからない。
最初から答えなど聞く気もないらしく、
関心をすっかりイルミネーションに向ける背中に
オレは恨めしげに呟く。

「おまえなんか、嫌いだ」

答えはない。
夜の闇の中で、不条理に光り輝くツリーの形が浮かぶ。
目の前にあってはならない、有り得ないはずの光景。
どんなにきれいでも、手に掴むこともできないのに。

オレはもう一度、あいつの背中に云い放つ。

「おまえなんて大嫌いだ」
「それも、わかってる」

心底楽しそうに笑うあいつに、
だったらオレを困らせるなとか、その性格改めろとか思ったが
口にしても無駄なのはオレがわかっていたので、
親父に見つかる前に、この派手な飾りを撤去の方向に決めた。


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