SEQUENCE_03




ありがとう。きみがこうしてたどってくれた道筋こそが、僕が現実へと記した
唯一の足跡です。
僕の名前は、田嶋里志と言います。
きみはもう覚えていないかもしれませんが、三年間という短い高校生活の中
で僕はきみと出会いました。
どうしてそんなふうに、きみが僕を憎むのか。あの時の僕にはその理由が
全くわからず、ただきみの振り上げたナイフを懸命に止める事しか頭にあり
ませんでした。
あのナイフが裂こうとしたのは、結局何だったのか。
初めは僕の首に向けられ、最後にはきみの胸へと下ろされて、ついには僕
の腕を僅かに裂いたに過ぎない鋭い刃。何も変わらない、何も失ったわけ
ではないと僕は思っていました。
でもそれは違っていた。
あのとき、あのナイフが裂いたのはきみの心だったと…事故の後きみに会
いようやく僕は気付いたのです。僕が現実で生きるためには、僕自身の夢
を殺さねばならない。この日記に書かれていた言葉の意味、たとえば失って
しまったものがきみの夢ならば、僕の現実は容易く崩れてしまう他はない。
やがて僕は思い始めてしまう。そんなものに過ぎないのだろうか?
僕にとっての現実は……
いや、もう止そう。
きみはこの日記を手にしてくれたのだし、僕は現実という迷宮の扉を通り抜
ける手段を手に入れた。

もうすぐきみに会える。



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