サードに頼まれて観測ポイントに向かったが、
迂闊にも岩に乗り上げて、見事に車が反転する。
今の僕は、砂と岩の広がる大地で遭難中だ。
救難信号は出したものの、それも届いたか分からない。
あたりが暗くなり、
このまま誰も迎えに来なかったらどうしようと考え始めた頃、彼が現れた。
白木だ。
長い髪を風にたゆらせて、薄闇の中にぼんやりとその姿が浮かぶ。
柔らかに笑い、こちらへ来いと手招きするので従った。
車から弾き出された際に、足を捻ったので随分と歩きにくい。
かなり歩いた気がするが、そうでないかもしれない。
足の痛みが限界に達して、歩みを止めた。
何処からか、僕の名を呼ぶ声がする。
「まひろ!!」
日鳥が、そう叫んで前方の闇の中から現れた。
サードと義炎の姿も背後に見える。
「やあ、日鳥――」
僕は安堵の笑みを浮かべて、右手を上げる。
そうして、白木はもう死んだのだと思い出した。
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