+妄想
休日の過ごし方13 (妄想話)

ジョン・ホープは店から3本の電話を入れた後、
チャイナタウンへと足を運び、いくつかの情報を仕入れた。
今まで使っていた北京からの密輸入ルートは、
ヤードの捜査が入ったばかりで使えなくなっている。
チャイニーズに投資するのは、しばらく様子をみた方がよさそうだ。
幸いにも商品は全部、摘発前に受け取りを済ませて別の場所に保管してある。
これからその倉庫へ行き、あの壷を店に運び入れておこう。

駐車場へと向かったホープが細い通りへと曲がった時、
彼の携帯電話が鳴り響いた。

『チャイニーズから受け取ったものを、こちらに渡して欲しい』

電話の男は名も名乗らずに、一方的にそう告げる。
受け取ったものとは、あの倉庫にしまってある陶磁器類のことだろうか?
だがなぜこの男は、それを知っているのだ。
ホープは怪訝に眉を潜めて、注意深く言葉を問い返す。

「あんたは誰だね?」

『そんなことはどうでもいい。渡すのか、渡さないのか』

「済まないが、何の話だか私には分かりかねる」

ホープは何も知らないふりをすることに決めた。
自分が偽造品を取引している証拠など、どこにもないはずだ。
もしかするとこれは、今までに騙された客の誰かが、仕組んだ罠かもしれない。

『とぼけても無駄だ。
 現にFBIの捜査官が、君の回りを嗅ぎまわっている!』

「FBIだと? ここはロンドンだよ。
 君ね、くだらん言い掛かりをつけるのは止したまえ」

しだいに焦りを浮かべる電話の声を、ホープが一笑する。

『渡さなければ、君の身の安全は保証できない』

「何度聞かれても、私の答えはノーだ」

ぶつりと通話が切れた。
ほぼ同時に、ホープの背後に白のワゴン車が乗り込んでくる。
車はそのままスピードを押さえない。

「――しまった!」

ホープを轢きはねて、車が逃走する。
マオは、慌ててホープの元へと飛び出した。

前へ 次へ 戻る