LA VIE EN ROSE 1 (妄想話)
ロンドン、ホワイトチャペル。
倉庫然とした古いフラットの部屋の戸口で、
アルとウルフは、先刻から1人の男と対峙している。
先日、未遂に終わった地下鉄爆破事件。
ヤードに届いた犯行メールから、
IT課とテロ対策課の協力で、送信者の割り出しに成功したのだ。
取り出した令状に記された容疑を、アルが告げる。
赤毛の大男よりも、この金髪の優男の方が手弱だと男は判断した。
咄嗟にアルへと体当たりを食らわせて、扉の外へと走り出す。
「クソッ… 待ちやがれっ!!」
ウルフが猛然と、男の後を追う。
崩れた体勢を立て直して、アルも慌てて階段を駆け降りる。
待てと言われて待つわけも無く、男は路上へと走り出た。
周囲は、複数の援護の警官で囲まれている。
男が足を止めて振り向いた。
「…ようやく観念したってか?」
ウルフがニヤリと笑って拳を握る。
その後で息を切らして、アルが銃を構えた。
男の口元に、不気味な笑みが浮かぶ。
「お前ら、みんな死んでしまえ!!」
男の手に握られたものに、ウルフの視線が止まる。
あれは爆破送信スイッチだ。
手動式の爆弾が、何処かにセットされている!
「――爆弾だ、みんな逃げろっ!」
ウルフが叫ぶ。
男の目が、近くに止めてある車に流れた。
ウルフはとっさにアルを突き飛ばし、その上へと自分の身体を臥せる。
アルの目に、一瞬の閃光が飛び込んだ。
続く強烈な爆音と共に、爆発炎上する車。
爆風が破壊された車体を吹き飛ばし、オレンジ色の熱が肌を焼く。
「ウルフ……?」
赤い血で濡れた自分の両手を、アルは呆然と見つめる。
意識を失ったウルフの身体が、力なくアルの膝上へと滑り落ちていった。
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