+妄想
休日の過ごし方11 (妄想話)

夜になって、アルがフラットに戻ってきた。
ロンドンの6月は日照時間も長く、外はようやく薄闇に沈み始めた頃合だ。
リビングの灯りは消えている。
アルは部屋の灯りをつけると、直ぐにソファへと目を向けたが、
そこに丸くなって眠っているイブカの姿はない。

ソファの周囲の床にはクリスプスの袋が転がり、
ボロボロと広がる屑だけが、イブカの痕跡を残している。

また掃除をしなくてはいけない。
アルが溜息をつく。
あれほど散らかすな、掃除をしろと言い続けてるのに、
どうしてイブは、ちっとも言う事を聞いてくれないんだろう。

「イブ!」

アルは同居人の名を呼んだ。
返事はない。
自分の部屋にこもっているのかと思ったが、違うのだろうか。

「イブ? いないのか?」

軽く部屋の扉をノックしてみるが、やはり返事はない。

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