+妄想
休日の過ごし方16 (妄想話)

ヤードに戻ったウルフは、廊下で待ち受けていたアイリーンに捕まった。

「あれっ、ワトソンさんは?
 一緒に食事に行ったんじゃなかったんですか?」

きょろきょろとウルフの周囲を見渡して、紙包みを抱えたアイリーンが訊ねる。
元より彼女の眼中には、ウルフやイブカの存在など、
アルを見つけ安くするための、目立つ赤い標識ぐらいにしか映っていない。

「アルならさっき、
 レストレードの親父んトコに、すっとんで行ったぞ」

「えーっ、そんなぁ〜。
 ワトソンさんを励まそうと、せっかくケーキを焼いてきたのに…」

アイリーンの期待に満ちた表情が、一気に落胆へと変わる。

「オレには、励ましはねえのか?」

「どうしてわたしが、ウルフさんを励まさなきゃいけないんですかっ?」

「どうしてって、そりゃお前――あっ!」

「えっ!?」

「そういやいたな。お前の他にも、アルしか眼中にねえってヤツが」

ウルフは一人呟くと、
あっと言うまに廊下の向こうへと走り去ってしまった。
残されたアイリーンが、立ち尽くしたまま呆然とそれを見送る。

「お前の他にもって…それって…どういうこと?」

前へ 次へ 戻る