休日の過ごし方17 (妄想話)
ウルフは自分の席に戻ると、
散らかった机の上から、投げ出されたままの携帯電話を取り上げた。
記憶から未登録のアドレスを入力し、そこに短いメールを送信する。
数分も経たぬうちに、携帯には着信不能のメールが戻ってきた。
ウルフはそのメールを返送すると、再び着信不能のメールを待つ。
それを辛抱強く幾度か繰り返した後、ウルフの携帯にコール音が響いた。
躊躇いも無く、ウルフがその通話を受ける。
『どうして、僕がロンドンにいると?』
声の主は名乗りも上げずに、刺のある口調で言い放つ。
ウルフには、それで相手を知るには充分だ。
「6月は、バラが綺麗だろ」
僅かに言葉をとぎらせた後に、怪訝な問いが返る。
『それだけの理由で…?』
「他に理由があんのか?」
本当は、ロンドンにいればいいとウルフは思っただけなのだが、
それは言わずに黙っておく。
せっかく繋いだラインを切られては元も子もない。
ウルフは場所と時間を一方的に告げて、自分から通話を切った。
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