休日の過ごし方23 (妄想話)
ネットの中には、イブカの居場所を示す情報が撒かれている。
その情報は巧妙に作られたトラップだ。
エサに喰らいついた者は、逆にデータを消去されてしまう。
そのポイントに手を出さぬまま、トムはマシンの画面を見つめていた。
いつものイブカであれば、こんな面倒なことはしないはずだ。
ここまで慎重に、所在を隠す理由があるのだろうか。
おまけに情報屋から得た話では、
例のFBIの特別捜査官までもが、イブカの行方を探しているという。
「何をしてるんだ、あいつは…」
思い悩んだトムが、額にかかった髪をかき上げる。
イブカを探し出すまでは…恐らく簡単なことだろう。
問題は、それでどうするかだ。
もしイブカの居場所が分かったとしても、
それを彼らに知らせれば、イブカのプライドは酷く傷つくに違いない。
あのひねくれ者は、ますます意固地になるばかりだ。
トムはしばらく考えて、一通のメールを送信する。
危険な魔窟に足を踏み入れずとも、
それが召還可能なモンスターであれば、呪文を唱えればいい。
それは単なるゲームの呪文だ。
ウルフが自分を呼び出す手段も、所詮はそれと同じではないか。
こちら側へと足を踏み入れるつもりもないくせに、
自分の都合で人を捕らえては、無神経にそれを解放する――
程なく届いたメールの返事に、トムが顔を上げる。
予想どおりのテキストを一瞥すると、
続いて別のアドレスに、違う内容のメールを送りはじめる。
穴に隠れたねずみを追いやるには、猫を使うのが一番だ…。
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