+妄想
休日の過ごし方32 (妄想話)

「心配かけて、ごめん」

マオの車で、イブカと共にヤードに戻って来たアルは、
ウルフを見上げてそう言った。

無事に戻って来ても、ゴメンじゃすまさねえと決めていたウルフは、
謝罪の言葉とは裏腹に嬉しそうなアルの表情に、呆れて怒る気力を失った。
悔し紛れに、アルの笑顔の元凶をポカリと一発殴る。

「――てっ!? 何すんだッ!!」

怒ったイブカが、蹴りの反撃をする。
ウルフがそれを素早く避けて、おや?と首を傾げた。

「イブ公、お前その声…」

「へへっ、イカスだろ〜?」

トーンの下がった声で、イブカが自慢気に笑う。
アルがウルフの肩を押さえて、二人の会話を遮る。

「ウルフ、僕はレストレード部長の所に行かないと」

「あ、ああ」

その場から逃げるように、アルは部屋を出た。
怪訝な表情でそれを見送ったウルフが、ふと気付く。

「あれっ、イブ公はどこ行った?」

イブカは部屋を出て、廊下の先へと進んでいた。
エレベーターに乗りこもうとしたマオの前に、素早く立ちふさがる。
いつもとは逆のシチュエーションに、マオは怪訝に眉根を寄せた。

「探しモノは、ココにあるぜ〜?」

イブカはマオの目前に、片手に持ったカードディスクをひるがえした。
あの龍の絵が描かれた壷の内側に、粘着パテで塗り込められていたものだ。
数枚の写真と会話の録音データ等が入っているのを、
イブカは既に〔シン〕で解析している。

マオが驚きで目を見開く。

「お前、いつの間にそれを」

カードに伸びたマオの手を、寸前で交わしてイブカが睨む。

「オレたちを利用したのか?」

「ワトソンの捕まっていた場所に、それがあった事ならば偶然だ」

「けっ! 偶然でなきゃ、テメーはデリートだぜ!!」

イブカが、カードディスクを投げ渡した。
捕らわれたアルにお構いなしにマオが突入していれば、
マオが自力で取り戻せたのだと、イブカには分かっている。
ディスクを受け取ったマオが、ふっ、と笑う。

「なにがおかしーんだ!?」

「あれがお前の、ウイーク・ポイントかと思ってな」

「テメーは、何もわかってねー」

「私が何を分かっていないと?」

「アルのよーなダメ捜査官は、テメーなんかにゃ面倒みきれねーってコトだ」

イブカの蒼い瞳が鋭い光を浮かべる。
これ以上は、余計な手を出すな。

「――待ったはナシだぜ? ディック・マオ・リーFBI特別捜査官殿」

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