休日の過ごし方35 (妄想話)
ロンドン市内からは鉄道で北へ約20分、
それから更に4キロほど車を乗り継いだところにある、
ザ・ガーデンズ・オブ・ザ・ローズ。
ここには約1700種類、約3万本の、あらゆる種類のバラが栽培されており、
バラの咲き誇る5月下旬から9月まで開園されている。
オールドローズを集めたクイーン・マザー・ローズ・ガーデンを過ぎて、
香りの強いバラを集めたセンティット・ボーダーの中をトムは歩いていた。
トムの携帯がメールを告げる。
イブからだ。
ヴァイオリンを聞かせてやる、とだけ短く書かれている。
「あいつ… 借りを作ったつもりなのか」
トムが笑う。
あれが貸しなどとは思っていないが、それは黙っておこう。
またイブカの演奏を聴けるのは楽しみだ。
ゲームはまだ続いている。
あのFBI捜査官を試してみるのも、面白いかもしれない。
彼は悪魔の誘惑に、その身を差し出すだろうか?
真実を秘めたまま、嘘で作り上げられた世界を目にした時、
その時にもまだ――あの男は、自分なりの信念を貫くことができるだろうか。
涼やかな風が首元を過ぎる。
今しばらくは、過ぎる時間をこのままで…。
(THE END)
|